2009年9月、他の大都市に比べて緑が少ないと言われる大阪の市街地で、どれほどのハチミツが採取できるのだろう?
未来の都市環境づくりに対して志をもった3人の素人メンバーで、まったくの未知数から、大阪初となる“都市養蜂”プロジェクトが発足しました。
パリ、ニューヨーク、銀座などの大都市で、“都市養蜂”なるものが始まっている…。
その事を知ったキッカケは何気なくめくっていたインテリア雑誌の小さな記事でした。自然とは無縁に思える都会でも、ミツバチが生息出来るエリアには、必ず自然空間がある。いわば“都市養蜂”とは、小さな自然への気づきを呼び覚ます環境活動であり、ハチミツはその恩恵の証。そしてミツバチは、自然・人・街をひとつにつなぐ、大切な役割を担っているのだと、その記事は教えてくれました。
当時、茶屋町のビル建設においてコンセプトワークを担っていた折、屋上緑化との組み合わせで菜園や都市養蜂を取り入れるアイデアを思いつきどんどんと夢が広がっていきました。しかし、他の都市に比べて緑が少ないと言われる大阪の市街地で、どれほどのハチミツが採蜜できるのだろう?
まったくの未知数から、大阪初となる“都市養蜂”へのチャレンジが始まったのです。
都市養蜂を始めるにあたり、パリ市内で3箇所、ニューヨークのマンハッタンやブルックリン、香港で行われている都市養蜂の現場へ実際に行き、手探りで試行を重ねました。
訪れる先々の乱立するビル群の中で、どんなにささやかでもしっかりと花や草木は息づいているということ。
さらに、農薬の少ない都会の蜜源から採れたハチミツは、意外なほどに素晴らしく美味しいことを実感したのです。
そして2010年3月、梅田茶屋町のヤンマービル屋上で大阪初の都市養蜂を開始。
この大阪の街には、どんな蜜源が潜んでいるのだろう?
私たちの希望を胸に飛び立ったミツバチたちが運んできたのは、収穫量こそわずかですが小さな花やハーブのフレッシュな香りを含む驚くほどに繊細で上品な甘さが広がるハチミツでした。
その後、2012年8月に大阪府緑化事業と連携協定を締結。“みどりの風を感じる大都市・大阪“がスローガン
2015年3月より和宗総本山四天王寺の境内で養蜂を開始。
2016年3月にはクラウドファンディングで支援を募り、服部緑地に体験型の養蜂場を開設しました。
近年、少しずつ認知されはじめたこの“都市養蜂” や“ミツバチプロジェクト”というワード。環境改善の活動として、世界の大都市で広がりを見せています。
大都市大阪においても、緑や食物が生育するために必要であるミツバチが存在しているということは、ミツバチによる自然環境の生態系サービスが行われている証です。
私たちは都市養蜂を通じて、
「日本の未来を美しくするシゴト」を行なっています。
都市養蜂とは文字通り都会でミツバチを飼育する事です。都会には小さな遊休地や使用されていない屋上のスペースなどが多数存在します。農作物の耕作と違って、広大なスペースをほぼ必要としない養蜂は空中農業とも言われ、都会で行う事ができる数少ない1次産業なのです。(もちろん多くの収穫量を求めるならばそれなりに広いスペースが必要)
ミツバチが存在することで、屋上菜園やベランダ菜園、街路樹などの育成に必要な授粉が行われ、かつミツバチはその蜜源から蜜を集め、副産物としてハチミツを収穫する事もできます。地域生態系において相乗効果となる生態系連鎖が生まれます。ミツバチの行動範囲では、公園や街路樹はもちろん、小さなプランターの草花にも訪れている事が確認されています。都市養蜂が都市生活者に自然と触れ合う機会を提供し、環境への意識を向上させると同時に受粉を通じて周辺植物の活性化にも貢献できるユニークな取り組みです。
実際に近隣環境を調査したところ、「都会の真ん中でこんなに美味しいイチゴが取れるなんて驚いた」などの声が寄せられ、都市生活者に対して生態系サービスや生物多様性の視点で、都会の緑化を見直すキッカケ作りに繋がっています。
今後の街づくりにおいて、緑化の推進などの環境整備に加え、ミツバチプロジェクトのようなソフトプログラムを提供する事で、人と自然が共生できる都市環境形成が出来上がります。
では、都市養蜂は簡単に行う事が出来るのか?というと答えはNoです。
ご存知のようにミツバチはその受粉活動により、作物生産や草木の生育に不可欠な生き物ですが、針を持った生き物です。スズメバチのように攻撃性を持った生き物ではありませんので、歩いている方がいきなり刺される心配はほとんどありませんが、都会で針を持った生き物を安全に飼育するということに対しては細心の注意と正しい知識が必要です。
また、大阪府には他の都道府県より厳しい養蜂条例があります。
飼育場所や離隔距離、内検の頻度や分蜂(巣別れ)の予防方法などの正しい養蜂知識が必要です。
ミツバチプロジェクトでは最低でも週に一度の内検を行い、ミツバチの健康状態のチェックと共に安全管理にも細心の注意をはらっています。
不思議なことに、丁寧に扱うことで穏やかなミツバチになっていきます。
サスティナブルかつ安全にミツバチを飼育する。
これは都市養蜂をおこなう上でとても大切なことです。
梅田ミツバチプロジェクトの養蜂場について
2018年現在、3箇所の養蜂場を運営しています。
※(旧養蜂場は、2010年~旧ヤンマー本社ビル屋上にて、2011年~2015年まではABCマートビルの屋上にて運営)
養蜂場の特徴
地上約50m,1Fにユニクロが入居する梅田茶屋町にあるヤンマー本社ビルの12階に茶屋町養蜂場があります。
ヤンマー株式会社さまより都市養蜂の目的についてご賛同いただき、大阪市内で初めてとなる都市養蜂の場所を無償で提供していただいております。環境学習会などの開催などにも協力いただいております。
茶屋町・鶴野町は大阪(梅田)の中心部にあり、現在は高層ビルや商業施設などが立地する場所ですが、かつては菜の花が咲き乱れる菜種の一大生産地でもありました。菜の花の実である菜種から採れる菜種油を採取し、灯明用の油として使用されていたのです。与謝蕪村が「菜の花や月は東に日は西に」と詠んだ当時の風景にちなんで、菜の花で街を彩るプロジェクト『菜の花の散歩道』が毎年実施されています。
養蜂場の特徴
1400年の歴史を持ち、聖徳太子が建立したとされる和宗総本山四天王寺の境内、“極楽浄土の庭”の池のほとりに、四天王寺養蜂場があります。ミツバチプロジェクトの活動に共鳴共感してくださった四天王寺さまが、天王寺区での養蜂場所として、社務所内の管理エリアをプロジェクトに提供してくださり、養蜂作業へも積極的に参加。
ミツバチ学習会の場所に御堂を提供いただいたり、天王寺区の蜜源マップの作成などにも協力いただいています。
毎月行われる「四天王寺わつか市」では四天王寺産のハチミツや焼き菓子などがマルシェを盛り上げます。
大阪の梅は大阪府の府花の1つであり、古今和歌集の中で「難波津に咲くやこの花冬籠り今は春べと咲くやこの花」と詠まれるなど、大阪にゆかりの深い花です。
昔から天王寺から大阪城にかけては梅の名所があり、風流人が集まり、多数の遊興客で賑ったとされています。
寺内の藤棚もミツバチの受粉によりどんどん元気になっています。
養蜂場の特徴
大阪府および大阪府公園協会様のご理解のもと、府営公園内の管理エリアに養蜂場を提供していただきました。
開設費用はクラウドファンディングで募集を募り、達成しました。
公園事業と梅田ミツバチプロジェクトがタッグを組んだ、『大阪に花と緑を!公園に行こう!』のスローガンで、perkハニープロジェクト大阪を2018年から始動。
オリジナルキッチンカーに乗って、養蜂場で採れたハチミツを使ったドリンクなどを提供しています。
それぞれの養蜂場ではミツバチ学習会も行われ、
地域への貢献をしながらお互いの顔の見える街づくりを行なっています。